「今日は比較的暇だよ」
そう言ってきた昨日の上司を信じて出社した朝。
あれ、電気がついてない……もしかして今日会社休みだったかしら!?
期待に胸を踊らせて、念の為鍵が空いていないか確認のため向かうと、そこには電気をつけずに事務作業をする隣の部署の上司がいた。
現実はいつも無情。
ついでに今日の上司は寝違えたのかそれとも持病の不整脈から派生した何かのせいなのか、肩が痛く腕に力が入らないと言って、朝の1時間で最低限の引き継ぎを終えて帰っていった。
幸い仕事は1人で終わる量だったし、同僚が来る頃には終わっているだろう。
午後は1人になるから、ゆっくり掃除したり上司のスペースの掃除をするのも悪くない……。
現実はいつも厳しい。
本部からヘルプのおっさんとお兄さんがやってきた。
ああ……適当に抜け出して免許センターに行こうとかも画策していたのに、これはだめだ……。
ついでに仕事がなってないとのことで、おっさんからお叱りと可愛がりを受けた。
仕事を教えてもらえるのはありがたい。わからないふりをしてこの人の仕事のやり方を学ぼう……。
「明日も来るさかいに。ほなまた」
バリバリの関西人のイントネーション。これがなきゃこのおっさんじゃない。
退社時にiPodを確認したところ、タイミングよく上司からラインが来た。
”明日は出社できるかもしれませんが、すぐ帰宅すると思います”
上司よ。それは今日と変わらないのではないだろうか。
明日もまあ一応、今日の夕方確認した限りでは必須の仕事は今日と同じくらいの量だった。
たぶん、それが終わったら新しい仕事をみっちり仕込まれるだろう。
良いんだ。うちの優しくて真面目で不器用な不整脈の上司が楽になるならこれくらいの経験積むべきだ。甘んじて受けよう。
ただし上司、お前の後は今すぐには継ぎたくない。
長生きしろ、健康には気をつけろ。末永く会社で真剣な顔で仕事してくれ。
私は静かに紙の音と外の風の音を聞きながらする作業が好きなんだ。